第1話「神隠し」

私の住む場所には、こんな話がある。

竹上橋たけうえばしの上で食事をしてはいけない。食事をした者は、神隠しに遭う」

 

私の名前は窪谷千紗くぼのやかずさ。おそらく、普通の中学生だ。

母と父がいて、友達も数人いて、普通の学校に通っている。

そんな私は今、学校に遅刻しそうになっていた。

 

竹上橋の上まで来た。学校はもう近い。

「はぁ、はぁ、あと5分で着く、かな?」

走り疲れて私はスマートフォンを見る。始業時刻は8時20分だが、8時13分だった。

「よし! おにぎりでも食べよう!」

おにぎりを食べる暇はないのだが。当時の私はとぼけていたのだろう。

リュックからおにぎりを取り出す。手作りのおにぎりだ。私は梅味が好きで、学校のある日はほぼ毎日梅味のおにぎりを食べている。

「おいしい……ん? 頭がふわふわしてきた……」

視界がぼやけてくる。そして、今更ながらあの言い伝えを思い出した。

なんとかその場にとどまろうと思ったが、無理だった。意識がなくなってしまったのかもしれない。

 

目が覚めると、見知らぬ村に来ていた。

「私、何をしていたっけ」

思い出そうとするも、思い出せるのは名前とリュックを身に着けていたことだけだった。

「リュックがない……というか、ここはどこ?」

辺りを見渡した。すると、1人の女性が立っているのが見えた。

「こんにちは、ここはどこですか?」

私はその女性に尋ねた。女性は、

「ここは口由村くちよしむらじゃ」

と答えた。

「くちよしむら? あ、えっと、私は窪谷千紗と言います」

名前を教えると、女性は少し驚いた。

「さっきここに来るのを見てな。いやあ、来た時に名前を覚えている人間がいるとは、珍しいこともあるものじゃな」

「えっ、はい……」

少し困ったが、女性は村を案内してくれるらしく、私はついていくことにした。

 

あとがき

今回はここまでです。

はじめての小説執筆なので、おかしなところもあると思いますが、大目に見てやってください。

次回は2月29日に更新する予定です。今回入れられなかった挿絵も次回は……?