私の住む場所には、こんな話がある。
「竹上橋の上で食事をしてはいけない。食事をした者は、神隠しに遭う」
私の名前は窪谷千紗。おそらく、普通の中学生だ。
母と父がいて、友達も数人いて、普通の学校に通っている。
そんな私は今、学校に遅刻しそうになっていた。
竹上橋の上まで来た。学校はもう近い。
「はぁ、はぁ、あと5分で着く、かな?」
走り疲れて私はスマートフォンを見る。始業時刻は8時20分だが、8時13分だった。
「よし! おにぎりでも食べよう!」
おにぎりを食べる暇はないのだが。当時の私はとぼけていたのだろう。
リュックからおにぎりを取り出す。手作りのおにぎりだ。私は梅味が好きで、学校のある日はほぼ毎日梅味のおにぎりを食べている。
「おいしい……ん? 頭がふわふわしてきた……」
視界がぼやけてくる。そして、今更ながらあの言い伝えを思い出した。
なんとかその場にとどまろうと思ったが、無理だった。意識がなくなってしまったのかもしれない。
目が覚めると、見知らぬ村に来ていた。
「私、何をしていたっけ」
思い出そうとするも、思い出せるのは名前とリュックを身に着けていたことだけだった。
「リュックがない……というか、ここはどこ?」
辺りを見渡した。すると、1人の女性が立っているのが見えた。
「こんにちは、ここはどこですか?」
私はその女性に尋ねた。女性は、
「ここは口由村じゃ」
と答えた。
「くちよしむら? あ、えっと、私は窪谷千紗と言います」
名前を教えると、女性は少し驚いた。
「さっきここに来るのを見てな。いやあ、来た時に名前を覚えている人間がいるとは、珍しいこともあるものじゃな」
「えっ、はい……」
少し困ったが、女性は村を案内してくれるらしく、私はついていくことにした。
あとがき
今回はここまでです。
はじめての小説執筆なので、おかしなところもあると思いますが、大目に見てやってください。
次回は2月29日に更新する予定です。今回入れられなかった挿絵も次回は……?