第2話「住む家」

これまでのあらすじ

窪谷千紗は、食事をしてはいけないという橋でうっかりおにぎりを食べてしまい、神隠しに遭ってしまう。

たどり着いた場所は口由村くちよしむらという村だった。

 

本編

「名乗るのを忘れておったな。わらわは長神凛子ながみりんこ

女性が言った。

「あ、ハイ」

「着いたぞ。ここがわらわの家じゃ」

凛子さんの家は、ボロボロではないがところどころに蜘蛛の巣があった。

「さ、入れ」

中に入る。玄関は砂だらけだったが、部屋はすっきりとしていた。

「今日から御前さんは、この家で暮らすことになるが、それでもいいな?」

「ええと……」

いきなり、この家で暮らすことになると言われてしまった。どうしよう。

「何じゃ、変な顔をして」

「だって……この家で暮らしたいなんて言っていないじゃないですか!」

「そうかそうか、だが口由村は妖怪や幽霊もいるぞ?」

妖怪や幽霊! 私は少し身震いしたが、

「でも、私はこの家にいたくありません」

とキッパリ言った。

凛子さんはあきらめたようで、「まあいいわ。好きにしなさい。ただし住む場所は自分で決めるんじゃぞ」と言って玄関を閉めた。

ちょっときつく言いすぎたかな、とも思ったけど。

私は頑張って住む場所を探すことにした。

「記憶が戻ったら……その時はその時だ」

 

あれから2時間ほど経っただろうか。

どの家でも、「泊まるのはいいけど、住むのはちょっと……」と言われてしまった。

「うーん……やっぱり凛子さんの家に行こうかな」

と考えていた時である。

女の子が猫をなでながら何かひとりごとを言っていた。年は私と同じくらいだろうか。

私は女の子に話しかけようと近づく。

「それでね、振り向いたら……」

女の子は私の方を見て、目を丸くした。

「うわっ!」

大声を出したせいで、猫は逃げてしまった。

「もう、やめてよ! せっかく猫さんとお話してたのに」

「ごめん!」

私は頭を下げて謝る。

「……いいよ。ところで、住む家を探している窪谷とかいう女の子って知ってる?」

「それ私、です!」

女の子はまた目を丸くした。

「やっぱりすずめさんの言ってた通りなんだ……あたしは宮廻亜衣梨みやざこあいり。家を探してるなら、いい場所教えてあげる!」

「え、本当?」

亜衣梨ちゃん、さっきまで怒っていたけど、家を紹介してくれるみたい。

これでまた「住むのはちょっと……」なんて言われたら……ううん、きっと大丈夫!

 

あとがき

どうも、片時雨です。

29日に更新するつもりでしたが変えました。16日と月末にします。

小説を書いているうちに設定が固まってきましたが、一人称などが創作サイトのものと変わってしまいました。

創作サイト直さなきゃな……でもやることが多い。

挿絵は描けなかったので、29日に挿絵が入ることに期待してください(え)